旅の始まり
旅の始まり

旅の始まり

7月17日18時30分、静岡県は清水市民文化会館マリナート大ホールにて、劇団東演『歌え!悲しみの深き淵より』(鵜山仁演出版)の旅公演がスタートしました。

この作品は私が入団する前に劇団の当たり演目として全国各地で上演された作品です。
1992年4月から1年間、私は研修生として東演で学びました。稽古場に出入りするようになり、劇団員や研修生が休憩をする談話室の壁に飾られている一際大きな表彰状に目が止まりました。そこに記されていたのが、『歌え!悲しみの深き淵より』でした。

伝説のように語られるその作品は、新劇界に足を踏み入れたばかりの私でも知っていた木村光一演出で、劇団の大先輩である近石真介がその存在感を遺憾なく発揮させた芝居だと後に知らされました。
更には、正式に入団して全国各地を旅公演で回るようになり、市民劇場や演劇鑑賞会で長く芝居を見続けている方とお話ができるようになると、多くの方から『歌え!…』の題目を聞かされることとなり、その舞台成果の偉大さを思い知らされました。

入団して32年間、年によって差異はありますが、ほぼ毎年何らかの作品で旅公演に出かけてきました。その経験で悟ったのは、お客様の記憶に、心に、残り続けるまでの作品を届けることがいかに難しいかということです。

「台本を八つ裂きにしたいくらい難しい役です。」と、森下彰子が『獅子』でお雪を演じる時に吐露していました。トム・ギャリソンに向き合って私も実感しております。
先輩諸氏の偉業に敬意を込めて、1ステージ毎に前進できるよう、今はただ蟻の一歩を確実に進めていこうという思いです。

大勢のお客様を前にしての本番は、稽古場の空間とは圧倒的なサイズの違いがあります。大きく出せるところはまだしも、繊細な表現を求められるところを、いかにしっかりと伝えられるか…正直、恐る恐るの第一歩でした。
温かいお客様の集中に支えられ、終演時にはみなさんの笑顔と対面することができました。

2日間休みが入っての今日は4ステージ目。もう一度気を引き締めて臨みます。
富士市文化会館ロゼシアター18:30開演です。